わたしはあなたにときめいてます


「堀尾さん。撮影間に合いそうですか」

「なんとかギリギリですけど……」

「堀尾さん。わたし、駅前で良いですよ」

ギリギリなら…。

「電車で」

「ダメだ……!!
送る……」

愛十が握っていたわたしの右手を強く握る。

「愛十さんが撮影に遅刻したら、困ります」

多くの人に迷惑かけます!!!

「堀尾さんが間に合うって……」

「ギリギリです。もし、間に合わなかったらどうするんですか」

大変ですよ?

「香澄が気にする事じゃないよ……」

「気にさせたのはあなたのせいでしょ」

あなたがわたしからなかなか離れないから!!!

『香澄……さん。
君も一緒に来てくれ』

わたしは堀尾さんから頼まれて、一緒に行く事で愛十をどうにか車に乗せる事が出来たが、わたし達の乗った車が地下駐車場から出てくると、たくさんの記者やカメラマンに囲まれたのだ。
愛十が載せたブログの写真のせいで。

「堀尾さん、わたしを駅前で降ろして下さい」

「分かった」

「堀尾さん……。香澄が教えた家まで行ってくれ……」

「駅前で降ろして下さい」

「駅前で降ろしたら…俺も降りるよ……」

「愛十さん」

「仕事は大事だ……。
でも…君も大事なんだ……」

ドクン。

「目的地まで無事に送りたいんだ……。
送らせてくれ……」
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