今宵は遣らずの雨

「その(なり)では御身が冷ゆるゆえ、どうぞお召しなされませ」

土間に戻った小夜里は、男に浴衣を差し出した。

「重ね重ね、かたじけのうござる」

男はそう云って少し頬を緩めた。

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