今宵は遣らずの雨

夕暮れ刻になって、今日もつつがなく手習所の子どもたちを家へ帰し、夕餉(ゆうげ)の支度を終えたおみつも裏の長屋へ戻した。

そのあと、湯屋へ行ってきた小夜里は「息子の言いつけ」どおり、戸締りをするために表に出た。

今夜からおよそ半月、一人暮らしだ。

小太郎が生まれるまでは、あたりまえだったことなのに。

小夜里の胸の中に一陣の風が吹く。

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