今宵は遣らずの雨

家の中に入ると、民部は後ろ手で戸を閉めた。

「お武家さま……女の一人身の家に押し入るとは無礼ではありませぬか」

小夜里は身丈のある民部を見上げ、怯まずに睨んだ。

民部はじっと小夜里を見下ろした。


「……おれを覚えておらぬのか、小夜里」

< 105 / 297 >

この作品をシェア

pagetop