今宵は遣らずの雨

小夜里を見つめる民部の切れ長の目が、揺れていた。

その目を見ると、先刻(さっき)までの小夜里の尖った目がとたんに影を潜めて、力を失う。

そして、小夜里もまた、いつの間にか同じように揺れた瞳になって民部を見つめ返していた。

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