今宵は遣らずの雨

「……一時の気の迷いだと?」

民部の声色が変わった。

「おまえは本当にそう思っておるのか」

思わず、小夜里は背けた顔を戻した。

民部は飢えた獣のような怖い目をしていた。


そして、大きな手のひらで、民部は小夜里の頬を包んだ。

「……どれだけ、おまえに逢いたかったか……
どれだけ、ここへ参ろうとしたことか……」

民部の顔が苦しげに歪んだ。

「やっと来られた亭主が、
待たせた女房を思う存分抱いて、どこが悪い」

いつの間にか、小夜里の帯は解け、その下の襦袢(じゅばん)を留める腰紐も、中の腰巻きも外されていた。

民部の方も、(すそ)が割れ、既に下帯がなかった。


「……小夜里、加減はできぬぞ。覚悟いたせ」

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