今宵は遣らずの雨

すると、怪訝な顔をして、民部が小夜里の方に振り向いた。

「なにを云うておる。
御役目を終えたら、湯屋(ゆうや)へ行って夕刻にここへ戻ってくるゆえ、夕餉(ゆうげ)の支度をしておけ」

さも当然のようにそう告げる。

小夜里の顔が、鳩に豆鉄砲を喰らったようになった。

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