今宵は遣らずの雨
◇第十話◇
しかし、とうとう明日、晦日となる。
小太郎が戻ってくる日だ。
民部には、今日を限りに家への出入りを禁じねばならない。
小夜里はいつ云おうかと、ここ何日も機会を窺っていたが、やはり云いだせなかった。
そして、今日になってしまった。
ところが、小夜里の懊悩は杞憂に終わった。
「……小夜里、夕刻戻ったら、おまえに話がある」
その日の朝、民部は大小の刀を左腰に手挟みながら、小夜里を見ずに前だけ向いて告げた。
そして、いつものように表門から堂々と出立した。
……あぁ、このお方も、晦日までだったのだ。
見送りのお辞儀をしながら、小夜里は察した。