今宵は遣らずの雨

「小夜里、おれの『奥』をおまえに直して、継室(けいしつ)として江戸に連れて参るからな」

宮内少輔が満足顔で微笑む。

「もう……おれから逃げられぬぞ」


いや、それでも、江戸に参るわけにはいかなかった。

なぜなら。


……わたくしには、小太郎がいる。

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