今宵は遣らずの雨

さらに、今日は息子の小太郎が藩道場から帰ってくる日である。

いつまでも、こんなことはしていられない。


すると、朝を迎えて、さすがの宮内少輔も睡魔に勝てずにいたのか、知らぬ間に隣で寝息を立てていた。

小夜里はこれを吉書(きっしょ)に、するりと(ねや)から出た。

取り急ぎ身支度をして、(へっつい)のある土間へ行き朝餉(あさげ)の用意に取りかかる。


やはり、まだおみつは来ていない。

こんなことは初めてだった。

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