今宵は遣らずの雨
小夜里は三つ指をついて、我が子を出迎えた。
「此度の御役目、大儀にてござりまする」
小太郎は少し、得意げな顔で母を見た。
離れていたわずかばかりのうちに、心なしか、逞しくなったように見受けられる。
「お師匠、小太郎はこの半月ばかりの間に、かなりの稽古を積み、励んでござった」
後ろ盾のない小太郎の世話役を務めてくれていた玄丞が云った。
「玄丞先生、此度は小太郎のために御足労をお掛けいたし、誠にありがたく存じまする」
小夜里は、今度は玄丞の方に三つ指をつく。