今宵は遣らずの雨

宮内少輔(くないしょうゆう)は、小夜里とは行きずりにするつもりはつゆもなかった。

他郷の親戚筋の娘は「正室」にして、小夜里を「側室」にしようと、兄である藩主に掛け合っていたのだ。

だが、藩主からは小夜里の家柄などには(さわ)りはないものの「正室」との縁談がまとまった直後に「側室」も同時にもうけるのは具合が悪いので、しばらく待てと云われた。

仕方なく縁組みのために他郷へ移った宮内少輔に、小夜里が懐妊したとの知らせが入った。

小夜里の暮らしぶりはいつも見張らせていた。

< 160 / 297 >

この作品をシェア

pagetop