今宵は遣らずの雨
その後、難産の末に生まれた子が男子だったことが、早馬によって知らされた。
宮内少輔は「男子誕生」と聞いて思わず湧き上がってくるうれしさを鎮めることに難儀した。
それから、小夜里の安否を尋ねると、遣いの者は急に表情を強張らせて「一進一退」であることを告げた。
すぐさま自ら馬を走らせて馳せ参じようとする宮内少輔を、家来たちが身体を張って押し留めた。
それから何日も経ったあと、玄丞の働きによって小夜里が大事に至らなかった知らせが来るまで、宮内少輔は文字通り生きた心地がしなかった。