今宵は遣らずの雨

しかし、ある日、おりんの父親が手習所に怒鳴り込んできた。

おりんは父親の許しを得てはいなかった。

父親には「琴を習っている」と嘘をついて、ここに通っていたのだ。

それを聞いた小夜里は、

「……わたくしは、そなたに、父上の許しを得るようにと申したはず」

静かにおりん(・・・)に告げた。

「師匠に偽りを申す者に、なして教えられようぞ。お帰りなされ」

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