今宵は遣らずの雨

「……もう『お嬢さん』ではございませぬ」

初音はお茶を供しながら、湧玄に云った。

そもそも、初音は湧玄より三つは歳上であったはずだ。

「それは、もう『先生の娘』として見なくてもいい、ってことかい?」

湧玄ははにかんだ笑顔を見せた。

初音は、云い方を間違えた、と思った。

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