今宵は遣らずの雨

「今はまだ、先のことは考えられぬゆえ……」

目を伏せたままの初音の言葉に、

「じゃあ、いずれは……」

湧玄が目を輝かせる。

「いえ」

強い口調で初音が遮る。

「これから、他郷で命がけで学問せねばならぬそなたに、おなごなぞ無用でござりましょう」

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