今宵は遣らずの雨

その夜、奥方が産んだのは娘であった。

その報を聞いて、御屋敷じゅうが消沈した。

しかし、ただ一人だけ、満足している者がいた。

……娘の父親であるはずの兵部少輔だった。


嫡子となる男子を産むのは、初音をおいて他にいない、と思っているからだ。

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