今宵は遣らずの雨

()の御酒もその者から頂いたものゆえ」

小夜里はそう云って、ふっくらと微笑んだ。

その頬は花が咲いたように、(ほの)かに色づいていた。

民部も、切れ長の鋭い目を細めて頬を緩めた。

手にした猪口をじっと見つめ、そして一口、くっと呑んだ。

それから、喉を通っていく地酒をじっくりと味わった。

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