今宵は遣らずの雨

初音も武家の子女の端くれだ。

このような無体(むたい)を最後まで受けて、おめおめと生きる気は毛頭ない。

一生をその御身だけに捧げると誓った、兵部少輔のためにも。

生き恥だけは(さら)したくない。


……初音は息を吸って、口の中で歯を上げた。

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