今宵は遣らずの雨
湧玄を捕らえた者たちが立ち去ったあと、兵部少輔は物騒な太刀を鞘に納め、初音の元にやってきた。
初音は相も変わらず、おのれ自身をぎゅっと抱きしめて、がたがたと震えている。
だが、意を決して兵部少輔を見上げた。
「……鍋二郎さま……その刀で……
……わたくしをお討ちくだされ」
悲痛な声でさらに続ける。
「初音は……穢れた身体になり申した……
かくなる上は……鍋二郎さまの手で……死出の旅に参りとうござりまする」