今宵は遣らずの雨

そんな矢先、これまた町では有力の廻船問屋が、(せがれ)に教えを説いてもらいたいと小夜里のもとへやってきた。

女師匠のところへわざわざ男の子どもを向けるとは面妖な、と思った小夜里はずばり訊いた。

すると、案の定、裏があった。

男の師匠の手習所へ通っていたのだが、あまりの狼藉で、次から次へと放免されていたのだ。

父親はそこまでは口には出さぬが、引き受ける男の師匠がいなくなったため仕方なく女の手習所へ来た、というのはその(さま)からありありと知れた。

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