今宵は遣らずの雨
初音に歳の若い友ができた。
寿姫は母親の芳栄の方の目を盗んで、初音の方のいる離れに遊びにやってくるようになった。
初音は、手文庫から千代紙を取り出して、寿姫のために鶴や玉手箱を折ってやった。
寿姫はたいそう喜んで、自分も折ってみたい、と云うので、次は手ほどきをしながら一緒に折った。
喜怒哀楽のなかった寿姫が、とりあえず笑みを見せるようになった。
「明日、来られた折には姉様人形をこしらえておくゆえに、楽しみにされよ」
初音がそう云うと、寿姫が芳栄の方譲りの華やかな笑みを浮かべた。