今宵は遣らずの雨

◇第七話◇


すーっと(ふすま)が開いた。

肩衣に半袴の(かみしも)姿の、兵部少輔(ひょうぶしょうゆう)と変わらぬほど長身の男が入ってきた。


「……御前様、南町奉行所筆頭与力、松波 多聞にてござりまする」

直ちに膝をついて平伏する。


座敷の奥の上座にいた兵部少輔が声をかける。

「よう参った、松波。(おもて)を上げよ」

そして、座敷にいた側用人(そばようにん)を人払いした。

襖がすーっと閉まる。

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