今宵は遣らずの雨

芳栄の方の部屋が凍てつくような寒さなのは、なにも霜月(十一月)に入った所為(せい)ではない。

居たたまれなくなった寿姫は、御手水(おちょうず)へ参りまする、と告げて立ち上がった。

すると、ひらり、となにかが寿姫の(たもと)から舞い落ちた。

……姉様人形だった。

その刹那、寿姫の心も凍てついた。

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