今宵は遣らずの雨
この部屋で、こんな人形を折ってくれる者はだれもいない。
初音の部屋で一緒に折った、姉様人形だった。
御殿女中が身につける矢羽柄の着物をまとっていた。
今日参ったら、違う柄の千代紙で着せ替えの着物を折ってくれているはずだ。
寿姫は、この人形が母の目に触れさせていけないものであることをしかと承知していた。
初音の方の部屋でだけ、楽しめるものであることを。
なのに。
……それでも、持ってきてしまったのだ。