今宵は遣らずの雨

「……そなたは『あれ』がどういう女か、判っておるのか」

かように美しき顔を持つ母なのに、その声は地獄の底を這う魑魅魍魎のようだった。

「わらわからは『夫』を、そなたからは『父』を……奪った女ぞよ」


寿姫は、薬包を受け取らざるを得なかった。

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