今宵は遣らずの雨
初音の方が笑顔のまま、文机から寿姫に向きを変え、姉様人形の着替えの着物を差し出す。
今日のは、海老茶と白の市松文様の千代紙で拵えられていた。
「ありがとうござりまする」
寿姫が待ちきれない様子で早速、江戸紫と白の矢羽柄の着物から人形を着替えさせる。
その子どもらしい寿姫の姿を、初音の方がうれしそうに見つめながら、目の前に置かれていた湯呑み茶碗を手に取る。
……そして。
湯呑みを口元に寄せ、茶を一口、飲んだ。