今宵は遣らずの雨
父が手習所を開いた頃にいた男の子たちは、父に対しては借りてきた猫のように殊勝な顔をしていた。
だが、その反動であろうか、父が留守の際には手のひらを返したように騒ぎまくった。
小夜里が大声を張り上げて怒ってみても、ちっとも聞く耳を持たぬ。
振り回されてほとほと疲れた小夜里は、
「自分はこの職には不向きか」
と何度も思った。
しかし、そのうちに自ずと知れてきた。
結局、子どもというものは……特に男の子は、身体に熱が篭っているうちには、なにを云っても無駄なのだ。