今宵は遣らずの雨

◇第十一話◇


芳栄の方はすぐに異変を見つけられて、直ちに医師の施しを受けたため、命に関わるようなことなく済んだ。

だが、身体はそうでも。

心は違った。


長い昏睡のあと、目覚めた芳栄の方の魂は、既にあの世に旅立ったようだった。

もう起き上がることはなく、日がな一日、天井だけをぼおっと見つめていた。

その美しき切れ長の瞳には、なにも映っていないようであった。

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