今宵は遣らずの雨

「海は、かような荒々しいだけの顔ではあらぬことを、そなたも知っておるな」

小夜里は、一太の勇ましい筆跡を見ながら、静かに云った。

一太は大きく肯いた。

「ならば、今日は、凪いだ海を書いてみなされ」

< 29 / 297 >

この作品をシェア

pagetop