今宵は遣らずの雨

すっかり息を整えた民部は、口の端を歪めて苦笑いした。

「……おれの話を聞いてくれるか」

砕けた口調に、江戸の名残を感じる。

武家の物云いではなかった。

そして、民部は静かに語り始めた。

民部がこの度江戸から国許(くにもと)へ帰ってきたのには、仔細があった。

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