今宵は遣らずの雨

嫡子でない武家の男は、他家に養子に入ることによって仕官の道を得ねばならぬ。

それが叶わぬのなら、一生妻を娶ることもできず、生家の隅で身を小さくして過ごすよりほかない。

次男でもなかなか難しい世なのに、三男である自分には養子の口はないであろう。

ただ、藩の剣術道場の師範だけは、嫡子でなくても仕官することができた。

民部は剣術の腕を磨いて身を立てようと決意し、江戸に出た。

< 43 / 297 >

この作品をシェア

pagetop