今宵は遣らずの雨
◇第七話◇
それからしばらく経ったある日の夕刻、手習所へ通う子どもたちを家に帰したその直後のことだった。
文机から立ち上がろうとした小夜里は、不意に眩暈がして、畳の上に崩れ落ちた。
物音を聞きつけ、すぐさま駆け寄った下働きのおきみは、手早く座敷に布団を敷いて小夜里を横たわらせた。
その際に、小夜里は急に胃の腑から込み上げるものがあって、少し吐いた。
顔からは血の気が引き、唇にも色がなかった。
おきみは医者を呼びに、慌てて表へ飛び出して行った。