今宵は遣らずの雨

子どもたちを其々(それぞれ)の家へと送り出してから雨が降ってきたので、ほっと一安心していたところだった。

手習所は先刻(さっき)までのけたたましさが幻のように、ひっそりと静まり返っていた。

今はただ、子どもたちの汗ばんだ土臭いにおいが、(ほの)かに残っているだけだった。

< 5 / 297 >

この作品をシェア

pagetop