今宵は遣らずの雨
◇第八話◇
小夜里は生家から縁を切られた。
とは云っても、金に行き詰まって川向こうの女郎屋などへ身を沈められては、兄の忠之進の出世如何に留まらず、御家の今後にも及ぶため、日々の掛かりは嫂の千都世に持って遣らせる手はずとなった。
しかし小夜里は、子を産むまでは兄に頼るほか仕方ないとしても、その後は自分が働いた糧でなんとか暮らしを立てたいと思っていた。
武家の女としてこの世に生を受けたが、このまま町家で一生を終えたとしても、なんの躊躇いもなかった。
ただ、父親のおらぬ子を身篭った自分に対しての、周りの目が気になった。
果たして、そのようなおなごが教える手習所に、我が子を預ける親がいるであろうか……