今宵は遣らずの雨
◇第九話◇
その朝、重だるい痛みからそれは始まった。
月の障りのときの痛みに似ていたが、突き出た下腹が張って張って仕方がない。
おきみに布団を敷かせて、横になってそのままでいると、痛みは潮が引けたように治まった。
しばらくはそのままの調子が続いていたが、突然、ぎりりっと鋭い痛みが身体を貫いた。
思わず呻き声を上げた小夜里は、その途端、下から漏れ出るものを感じた。
小夜里の様子を見たおきみは慌てて、奥の長屋の自分の母親のおとくのところに向かって、飛び出して行った。