今宵は遣らずの雨
産湯を浴びた赤子は手拭いで身をぬぐわれ、初衣に包まれたあと、嫂の千都世に渡された。
「……男の子じゃ。まぁ、あんなつらいめして生まれなすったというに、なんと元気な」
手足をばたつかせた赤ん坊を少しこわごわ抱きながらも、千都世は目を細めながらそう云い、小夜里にその顔を見せた。
後産を終え、幾重にもなった布団を背にして、もたれかかって座していた小夜里は、ただただ身体が重くてだるかった。
しかし、初めて見る我が子に、知らず知らず笑みがこぼれた。
母親になれたのだ、という喜びとともに、左右の乳がさーっと張りつめた。
先刻までの激烈な痛みは、今やすべて吹き飛んでいた。