今宵は遣らずの雨
そんな小太郎であったが、妙に身体が弱い性質があった。
季節の変わり目には必ず風邪をひき、思いのほか長引いた。
丑三つ刻、高熱のために、弱り切って荒い息を吐く、たった一人の我が子。
額においた手拭いが、すぐに熱を帯びる。
「……この母を独り、置いていく気か」
平生は、母一人子一人で気を張って生きている小夜里の目に、涙が込み上げる。
熱を帯びた手拭いを、すぐさま手桶の水にくぐらせる。
この子は、絶対に、死なせやしない。
小夜里は歯を喰いしばる。
……そうやって、
この子が数え七つになるまで、
二人きりで暮らしてきたのだ。