今宵は遣らずの雨
後ろ盾のない小太郎が、将来どれだけの人の上に立てる人物になれるかどうかはわからぬが。
武家として生を受けたからには、この教えはこれから精進せねばならぬことばかりだ。
小太郎にとってはたった一人の親として、どのように導いていけばよいのか……
小夜里は気が遠くなりそうだった。
「お師匠」
玄丞が急に、改まった顔になった。
「今日は仔細があって、こちらに参った」
なんの話か見当もつかなかった。
だが、なにやら込み入った話になるやもしれぬ、という気配は感じられた。
小夜里は、奥の座敷に玄丞を通した。