今宵は遣らずの雨

「母上、心配は無用でござる。立派に稽古に励んで参りまする」

小太郎が期待に胸を膨らませ、紅潮させた頬で告げたかと思うと、

「……それから母上、女の一人身は物騒でござるゆえ、陽が落ちればしかと戸締りをなされよ」

いっぱしの顔で神妙に付け加えた。

< 99 / 297 >

この作品をシェア

pagetop