婚約破棄するつもりでしたが、御曹司と甘い新婚生活が始まりました

1、私の婚約者

「玲人と瑠璃ちゃんも無事に大学卒業したし、そろそろ式の日取りをいつにするか決めないとね」

目の前の席に座っている玲人君のお母さまが、私に向かってにこやかに微笑む。

「あの……その……大学を卒業したばかりですし……」

机の下で手をもじもじさせながら、私は言葉を濁した。

三月下旬、早咲きの桜が咲いてめっきり春らしくなってきたのに、私の心はかつてないほど重い。

栗田瑠璃、二十二歳。

身長百五十八センチ、アッシュブラウンのストレートロングの髪にぱっちり二重の目が特徴の私。

ノーメイクで髪を下ろしていると、実年齢より幼く見られる。

父は百貨店最大手、栗田デパートの社長。

私は今、大学卒業のお祝いということで婚約者のご両親に呼び出され、高級ホテル内にあるフランス料理の名店で婚約者も交えて四人で食事をしている。