婚約破棄するつもりでしたが、御曹司と甘い新婚生活が始まりました
「やあ、瑠璃ちゃん、久しぶりだね。九条さんのところで働いていると聞いてビックリしたよ」

八雲物産は日本でも三本の指に入る商社で、社長の八雲柊一郎さんはおじさま同様、財界の大物。

歳は六十くらいで、すごく偉い人なんだけど、話してみると気さくなおじさんだ。

「八雲のおじさまご無沙汰してます。去年の秋の天明園でのお茶会以来ですね」

「そうだな。瑠璃ちゃんの着物姿が艶やかだったなあ。うちの息子のところに嫁に来てくれないか?」

八雲物産の社長はにっこりと頰を緩める。

すでに婚約してるんですよ……なんて言ったら自慢しているように聞こえるかな?

返答に困っていたら、玲人君が私の側に来て、私の肩に手を置き、茶目っ気たっぷりに言う。

「八雲さん、彼女は僕と婚約してるんです。口説かれては困りますよ」

一瞬聞き間違いかと思った。



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