婚約破棄するつもりでしたが、御曹司と甘い新婚生活が始まりました
小鳥遊さんは私に向かって優しく微笑み、何事もなかったかのように「あ〜、腹減った」と言って秘書室に入っていく。

玲人君の言葉にジーンときた私は、しばらくこの場から動けなかった。

佐藤さんには申し訳ないと思いつつも、嬉しかったんだ。

断ってくれる……とは思っていたけど、それは百パーセント確信していたわけではない。

佐藤さんに”いいよ”なんて言うんじゃないかって思って気が気じゃなかった。

玲人君はちゃんと自分で私を選んでるって言ってくれたのに……。

私ってなんて面倒くさい女なんだろう。

身体だけじゃない。

心も強くならなきゃ。

「こんなところで何ボーッと突っ立ってんの?」

玲人君の声がすぐ側で聞こえてハッとする。

「あの……スマホ忘れて」

もじもじしながら言えば、玲人君は私のスマホを差し出した。

「はい、これ。机の上にあった」
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