婚約破棄するつもりでしたが、御曹司と甘い新婚生活が始まりました
「会食に行くまでまだ時間があるから、受付まで送ってく」

多分、私がボーッとしているから心配なのだろう。

「いいよ。ちゃんとタクシー乗って帰るから」

そう言って断るが、玲人君はフッと笑い、私の手を引いてエレベーターに乗り込む。

中には誰もいなかった。

「今の様子だと、どこかで転びそうだけど」

「そんな子供じゃないよ」

少しムッとして言い返したら、彼はサラッとこちらがドッキリする発言をした。

「子供と思ってたらキスなんてしないよ」

「ちょっ……突然、何言い出すの!」

私達しかいないとは言え、会社でそんなこと言われたらドキッとしてしまう。

狼狽えながら文句を言えば、玲人君は心地よい声でハハッと笑った。

「動揺し過ぎ。このウブな反応もいいけど、そろそろ慣れて欲しいな」

年は一緒なのに、彼は私と違って大人だ。


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