婚約破棄するつもりでしたが、御曹司と甘い新婚生活が始まりました
拓海さんが馴れ馴れしく私の肩に触れてくる。

「……あの、何しに来たんですか?」

警戒しながら尋ねると、彼は海外ブランドのロゴが入った紙袋を差し出した。

「お前が九条で働いてるって聞いたから、様子を見に来てやったんだよ。これはイギリス土産だ。イギリス限定の香水と口紅だぞ」

様子を見に来たって……学校の参観日じゃないんだから。

「はあ、どうもありがとうございます」

苦笑しながら紙袋を受け取る。

たまにブランド物の化粧品をもらうが、私の趣味には合わなくて、友人にあげたりしている。

「イギリスにはあと二年いる予定じゃありませんでした?」

あまりに素行が悪くて、父に『イギリスで五年勉強して来い』と命令されていたはずなんだけど、いつ戻って来たんだろう?

「ふん、そんなの知るか。三年もいたんだ。充分だろ」

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