婚約破棄するつもりでしたが、御曹司と甘い新婚生活が始まりました
拓海さんは、吐き捨てるように呟く。

つまり、父の命令に背いて帰国したってこと?

なんて勝手な人なんだろう。

私でも呆れてしまう。

「それにしても、お前、もう社会人ってのに、ホント化粧っ気ないよな。口紅塗るだけでも違うぞ。俺が塗ってやろうか?」

拓海さんは突然私の顎をクイと掴み、私の顔をマジマジと見た。

「い、いえ、もう家に帰るので結構です」

怯えながら答えれば、彼は私の目を見てうっすらと笑みを浮かべる。

「それはちょうどいい」

「え?何がですか?」

ビクビクしながら聞けば、拓海さんはニヤリとした。

「どうせ今帰るんだろ?俺に付き合えよ。しばらく見ないうちに可愛くなったじゃねえか」

その妖しげな目に悪寒がした。

なんか不気味な感じがして怖い。

でも、相手は従兄。

彼の手を振り払って警備の人を呼ぶわけにはいかない。
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