婚約破棄するつもりでしたが、御曹司と甘い新婚生活が始まりました
8、彼のSスイッチ
「瑠璃?」

玲人君のひどく驚いた声がして、ナプキンで口を押さえたままその胸に寄りかかった。

気持ち悪い。助けて!

口に出しては言えず、心の中で訴える。

すると、玲人君はすぐに察してくれて、近くにいた店員に声をかけた。

「すみません。トイレはどこですか?」

店員にレストラン内にある個室トイレに案内され、玲人君はトイレの前で私を下ろす。

彼がドアを開けて、中に入ると一気に戻してしまった。

醜態を晒してる……なんてことも考えられず、激しく咳き込むと、彼が黙って背中をさする。

すると、だいぶ落ち着いてきて、少し気分が楽になった。

「もう吐き気収まった?」

玲人君が私の顔を覗き込みながら聞いてくる。

「多分……」

やっとのことでそれだけ口にした。

吐いたせいか身体はグッタリして、立っているのも辛い。


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