婚約破棄するつもりでしたが、御曹司と甘い新婚生活が始まりました
お祖父様の指摘に、玲人君は澄まし顔で答える。

「それは、否定はしませんよ」

お祖父様は何事にも動じない玲人君に歯ぎしりして悔しがる。

「……憎らしい奴じゃ。瑠璃ちゃん、何か困ったことがあったら遠慮なくワシに相談しなさい」

「はい、ありがとうございます。あの〜、さっきうちの父が大変とか言ってたのは……?」

玲人君が現れる前、お祖父様は『誠君が最近大変だった』と何か言いかけていた。

『誠』と言うのは、父の名前だ。

「ああ、それは……」と呟きながらお祖父様はチラリと玲人君に目を向ける。

玲人君は何も言わなかったが、お祖父様は笑って言葉を濁した。

「それはなんでもない」

「会長、そろそろ開場の時間ですよ」

玲人君は腕時計を見てお祖父様を急かすと、「じゃあ、栗田さん、受付しっかり頼みます」と副社長の顔で私に言葉をかけた。

「あっ、はい」
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