婚約破棄するつもりでしたが、御曹司と甘い新婚生活が始まりました
玲人君の目を見て頷くと、彼はお祖父様に手を貸して席に向かう。

「私も受付やらなきゃ」

気合いを入れて受付に戻ると、ちょうど社長であるおじさまと秘書の前田さんが到着したところだった。

「やあ、瑠璃ちゃん、宜しく頼むよ」

おじさまは私を見てニコリとすると、前田さんと会場に入っていく。

招待客が続々とやって来て、松本さんや佐藤さんとともに名簿をチェックしながらリボンやパンフレット、記念品を渡していく。

だが、七十代くらいの男性が受付に来た時、ちょっとしたトラブルがあった。

「招待状はお持ちですか?」と、佐藤さんが男性に声をかける。

男性は「ない」とぶっきら棒に答えた。

「では、名刺をお持ちでしょうか?」

佐藤さんがマニュアル通りの対応をするが、男性は仏頂面で「ない」と返す。

ピリピリした空気が流れ、佐藤さんは少し強張った顔で尋ねた。
< 198 / 256 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop