婚約破棄するつもりでしたが、御曹司と甘い新婚生活が始まりました
13、冷たい雨
「栗田さん、今日はもういいよ」

経理に出す書類を作っていたら、定時きっかりに、小鳥遊さんに声をかけられた。

「え?でも……まだ接待費の入力が終わってないんですけど」

驚きながらも反論したら、彼はわざと厳しい顔をして言った。

「これは上司命令だから」

式典の後は、みんなで会社に戻っていつも通り仕事をした。

溜まっていたメールの処理や、会議資料の準備、電話応対など慌ただしく過ごしていたお陰で、父のことを思い悩む時間もなかった。

だが、やっぱり不安が顔に出てしまうのかもしれない。

周りにいる秘書さん達が、口を揃えて言う。

「栗田さん、帰った方がいいわ。疲れた顔してる」

これ以上反論しても勝ち目はないし、その気力もない。

精神的なダメージが大きいせいだ。

大きな失敗をする前に帰ろう。

「すみません。そうさせてもらいます」
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